日本MRSニュース Vol.16 No.1  February 2004


やあこんにちは

先端マテリアルリサーチとナノテクノロジー

長崎総合科学大学学長、京都大学名誉教授  山邊 時雄

山邊 時雄 (37882 bytes)

 20世紀後半に現れた代表的な新材料、シリコン半導体と合成高分子は、その後の人類の生活を大きく変えることになり、前者は酸化物半導体から昨今のフラーレン、カーボンナノチューブ等新炭素系材料にまで拡がり、後者は現在医用高分子材料にまで発展し、最も先端的な材料の科学技術として世界の注目を集めている。これらの材料の構造や物性を調べる手段は、電子顕微鏡等によってナノメートル(10-9m)、すなわち10Åの世界に及び、表面から端の構造等も含め、まさに材料のこのスケールの部分を目で見ることができるようになっている。高分子のような柔らかい材料に於いても、NMR 等の測定手段の進歩によって、分子レベルの様子を知ることが可能になっている。また光科学の進歩により、材料によってはナノからピコ秒(10-9〜10-12秒)の原子の動きも観測されるようになっている。このように現代の科学技術をもってすれば、材料の構造や動きは、好むと好まざるに関わらず、空間的にはナノサイズ、時間的にはピコ秒のオーダーで考察されることを余儀なくされる。このサイズの材料といえば、もはや大型の分子に相当し、化学材料や分子材料と呼ぶにふさわしくなる。これらは有限の大きさと形で規定され、その中にあって機能性部分は必ずしも材料の内部ではなく、端あるいは表面にあることが多い。いずれにしても、これら分子材料の諸物性は、分子の大きさと形に大きく依存することになる。 

 例えば次のような思考実験を考えてみよう。今、数ミリの長さの超伝導状態にある物質を考えてみる。これを半分にしても超伝導状態にあることは変わらないであろう。さらに半分にしても同様であろう。しかしこの操作を繰り返していくと、いつかナノサイズになり、それでもなお超伝導状態にあるといえるであろうか。あるサイズのところでこの状態は消えてしまい、質的に全く異なる状態になるのではなかろうか。最近の高温酸化物超伝導体の議論にあるように、超伝導状態の原因はクーパー対の形成にあるが、ナノサイズのクーパー対の分子論的解明や、そのサイズ依存性の解明が待たれるところである。

 エレクトロニクスの世界で主役である電子についても、このメゾからナノスペースに移行することによって、物理的イメージに近い粒子的電子像から、化学的イメージに近い波動的電子像に変わっていくことが予測される。例えば、ナノテクノロジーの代表格とも目されるカーボンナノチューブについていえば、円筒軸方向はミクロンの長さであるが、直径方向はナノサイズであることから、この電子の波動関数は、軸方向は粒子的性質で、垂直方向は波動的性質の関数で表現され、このことが思いもよらない新しい電子物性を示すことになる。

 ナノサイズのエレクトロニクス、すなわちナノエレクトロニクスの世界では、同じサイズでも、円形であるか菱形であるか等によって電子状態は全く異なり、例えば前者は半導体であるが、後者は金属的になるといったように、いずれこの素子の形状が大きな問題となってくるであろう。

 医用高分子に及んでは、従来の生体親和性の合成高分子材料の考え方から、幹細胞由来の再生医用材料作製の可能性も出てきており、材料作製に対する将来の科学・技術の方向を示すものとも言えよう。メゾからナノペースの材料に移って行くとき、そこには思いがけない新材料、新物性発見の可能性が秘められている。この分野の発展に大いに期待したい。

 


トピックス

ヒト胎盤細胞を用いたヒトES細胞の増殖用支持基盤材料の開発

東京都立科学技術大学 大學院システム工学専攻教授 宮本 寛治

1.はじめに

 平成9年、日本でも臓器移植法が制定され、脳死による移植が可能となったが、このような臓器移植には、免疫拒絶問題や臓器ドナー数の絶対的な不足などの致命的な欠点がある。この様な背景をもとにいま、組織、臓器再生をはじめとする再生医療に注目が集まっている。再生医療とはいままでの治療法では治らなかった怪我や病気を細胞を用いて治療する治療法である。いまや世界的に研究がおこなわれ、日本も国家プロジェクトとして研究が進められている。そこで、細胞による組織、臓器再生などの再生医療を実現するためには、以下のような条件を兼ね備えた細胞や培養システム等が必要になる。

(A) 自らを増やす「自己増殖能」に優れている。
(B) 様々な種類の細胞へと分化する「分化能」に優れている。
(C) 移植時に免疫拒絶反応が生じない。
(D) 安全にしかも大量に細胞を増殖させる培養システムが必要である。
(E) 必要な細胞・組織などに分化させるシステムが必要である。
(F) 3次元的な組織・器官に成長させる為の足場になるような生体高分子材料の開発システムが必要である。

等を満足させる細胞及び培養技術開発等がなされる必要がある。
現在、再生医療に用いられる細胞としては,

@ 人工授精した余剰受精卵から作製した胚性幹細胞(ES cell:Embryonic Stem Cell)を用いる。
A 骨髄内にある間葉系幹細胞を用いる( MSC:Mesenchymal Stem Cell)。
B 骨髄内に極わずかにある成人型多能性体性幹細胞(MAPC: Multipotent Adult Progenitor Cell)を用いる。
C 組織、器官内に存在する幹細胞を用いる。
D ヒト胎盤細胞を用いる。

将来、さらに可能性がある細胞としては

Eヒトクローン胚を作成して本人のES細胞を作る。
F体細胞をリプログラミング(Reprogram)して用いる。

等が考えられるが現時点でこれらの細胞を作成することは容易ではない。
 ここで幹細胞とは未分化な細胞のことであり、幹細胞が分化することにより多様な細胞が生まれる。あらゆる細胞へと分化可能であることを「全分化能(全能性)」、限られた範囲の細胞へと分化することを「多分化能(多能性)」と呼んでいる。

次に上記のいくつかの細胞の特徴を個別に述べる。

@ 胚性幹細胞(ES cell)について
 マウスでは受精後3.5日の受精卵から採取可能である胚性幹細胞は、全分化能をもち、あらゆる細胞・臓器に分化できることから「万能細胞」とも呼ばれている。この様な全能性に加えて、ES細胞はガン細胞並みの自己増殖能を有する。
 しかし、ヒトを対象とした場合では受精卵を用いる必要があるため国の規制は厳しく、近年ES細胞の作成が制限付きで認められたとはいえ、倫理的な観点からも検討していく必要は多い。ヒトES細胞は現在、京都大学で作製されている。今後使用機関から文部科学省に使用許可申請を行い認められれば分配が可能とされている。ES細胞を臨床応用するまでには問題点も数多くあり解決していかなければならない問題も多い。具体的には支持細胞(フィーダー細胞)の開発や分化誘導法の開発などである。ヒトES細胞ではマウスES細胞の分化誘導法がそのまま応用される例は少ないかもしれない。また臨床応用を考えた場合、安全な培養方法の確立、分化した細胞を移植した場合の免疫拒絶反応の回避、生着率、機能の維持など様々な問題点をクリアーする必要があるが再生医療としてのES細胞は極めて魅力的な細胞源である。

A 成人型多能性体性幹細胞(MAPC)について
 骨髄などの主要な成体組織には完全に分化せずに残り、多能性を有する幹細胞が存在する。さきのES細胞と区別するため、成体組織より採取できることからこの幹細胞のことを体性幹細胞と呼ぶ。成体組織細胞が損傷や疾患、もしくは老化によって死んだ場合、この幹細胞が分化することによってその部位を修復する。代表的な体性幹細胞には、血液細胞へと分化する造血幹細胞や脳神経細胞へと分化する神経幹細胞などが存在する。
 これらの体性幹細胞は様々な種類があるが、ES細胞ほど多くの臓器や組織へと分化する万能性は持ってはいないと思われていた。
 しかし成人の骨髄内に存在する「間葉系幹細胞」には、ES細胞と同じ万能性があるということを2002年6月に米ミネソタ大のキャサリン・ベルファイ教授らが報告した。この間葉系幹細胞は骨髄中にあって、神経や骨、血球などに分化する体性幹細胞のもとになる基本的な細胞とみられており、実験により試験管内において、このMAPCが神経、肝臓、膵臓、骨、軟骨、血球などに分化することが証明されている。

ES細胞を作るには受精卵の破壊が伴うほか、免疫反応の防止のためクローン技術を使用してクローン胚を使う必要があるなどの理由から、倫理的問題等があるが再生医療には魅力的な細胞である。他方、成人骨髄から同じ働きをもつ細胞を得ることができれば、こうした倫理的な問題は解決する。また移植時の免疫拒絶問題についても、患者本人の細胞を用いるため拒絶は生じない。しかし、MPACは骨髄細胞10万〜1億個に1個しか存在しないほど少ないので抽出は極めて難しく、現段階では報告例は非常に少ない。世界的にもこの細胞を分離できる技術を持っているのは数人といわれている。

そこで、我々の研究室では骨髄細胞からこのMAPC万能様細胞をいかに効率よく分離し増殖させるかという研究テーマと同時にヒトES細胞の安全な培養法の確立を目指し研究をしている。今回、我々の研究室でヒト胎盤由来細胞を用いて霊長類であるサルES細胞を未分化のまま、増殖させる培養方法を確立したのでその一部を報告する。

 

2.ヒト胎盤由来細胞を用いたサルES細胞の培養方法

 ヒト胎盤は東京都立科学技術大学内に設置してある倫理委員会及び胎盤提供病院内にある倫理委員会の承認後、妊婦さんや家族の方に研究の目的を主治医から説明し同意を得られた場合に胎盤を頂いた。頂いた胎盤から解剖学的に羊膜と絨毛膜板を取り出し、それぞれをトリプシンとコラゲナーゼ酵素溶液で処理して細胞を得た。羊膜細胞(図1)及び絨毛膜板細胞をゲラチン処理したシャーレに播種し培養後、マイトマイシンで処理した細胞を支持細胞とした。それぞれの支持細胞上にサルESを播種し培養した。培養後8日目くらいでサルES細胞がほぼ一杯になったので継代をした。現在、培養後半年以上経っても未分化能を保ちながら増殖している(図2)。時々、未分化マーカーを調べアルカリフォスファターゼ(ALP)、SSEA-1, SSEA-4, Oct-4 遺伝子発現などSSEA-1以外全て未分化マーカーが陽性であった。またSCIDマウスに羊膜細胞上で培養したサルES細胞を移植したところ三胚葉に分化した奇形腫(テラトーマ)を形成した。これらの実験結果からヒトの羊膜細胞、絨毛膜板細胞上でヒトES細胞を未分化能を保ちながら増殖させることができると思われる。いままでヒトESを含めマウスES細胞等は支持細胞としてマウスの胎児14日令の胎児繊維芽細胞を用いて培養してきた。マウスなどの動物由来の細胞を使用するとヒトES細胞に危険因子等(ウイルス等)の混入が起こり、ヒトES細胞を用いた臨床応用には危険がともなう。安全なヒトES細胞培養法の確立が待ち望まれているがヒト胎盤由来細胞はヒト由来細胞であり、免疫拒絶反応も少なく、倫理的問題も少ないことからヒトES細胞の培養の支持細胞として有望である。現在、我々は国へヒトES細胞の使用許可申請を計画して準備を進めヒト胎盤由来の細胞を用いて支持基盤の開発を目指し培養系を確立しようとしている。ヒトES細胞の支持細胞として外国ではヒトの中絶胎児の細胞やヒトの骨髄由来のストローマ細胞を用いた報告は認められるが倫理的問題も有り支持細胞としてはベストとは言えない。そこでヒト胎盤細胞を利用したヒトES細胞の支持機能材料の開発及び機能解明は重要である。

 再生医療は、根底を覆す画期的な医療法として、そして21世紀の中心産業として世界中が注目し、期待している。しかし受精卵をもちいた再生医療は倫理的な問題(クローン人間、ヒトがヒトを創りかえるなど)と常に背中合わせであり、それゆえ危険な側面を持っている。しかし、受精卵に対するガイドラインは国によって異なる。どんな国の人間でもこの恩恵に授かれるようにするため、世界的なガイドラインの作成が望まれている。現状では本人の骨髄内のMAPC等を使用して再生医療に応用とする動きは免疫拒絶反応もなく、倫理的問題も受け入れやすいが分離法などの技術的な困難さは伴うが極めて魅力的な細胞である。そこでしばらくはこれら2つの細胞、体性幹細胞および胚性幹細胞を使用して研究をすすめるべきだと考えている。

文  献

1) Thomson J A et al. Embryonic stem cell lines derived from human blastocysts, Science, 282 (1998) pp. 1145-1147.
2) Suemori H et al. Establishment of embryonic stem cell lines from cynomolgus monkey blastocyts produced IVF or ICSI, Dev Dyn 22 (2001) pp. 273-279.
3) Richards M et al. Human feeder support prolonged undifferentiated growth of human inner cell masses and embryonic stem cells, Nat Biotechnol., 20 (2002) pp. 933-936.
4) Cheng L et al. Human adult marrow cells support prolonged expansion of human embryonic stem cells in culture, Stem Cells, 21 (2003) pp. 131-142.
5) Miyamoto K, et al. Human placenta feeder layers support undifferentiated growth of primate embryonic stem cells (投稿中)

 

図1 培養した羊膜細胞 (27040 bytes)
図1 培養した羊膜細胞

図2 羊膜上で増殖したサルES細胞 (33081 bytes)
図2 羊膜上で増殖したサルES細胞

 

連絡先:東京都立科学技術大学 大学院 システム基礎工学専攻 
      再生医療工学研究室
      宮本寛治
      Tel & Fax: 042-585-8641
      E-mail: kmiyamot@cc.tmit.ac.jp            

 


報告・ご案内

国際会議報告

第8回IUMRS先進材料国際会議(IUMRS-ICAM 2003)開催報告

横浜国立大学大学院 環境情報研究院人工環境と情報部門 教授 鈴 木 淳 史

 標記国際会議が、2003年10月8日13日に、パシフィコ横浜において開催された。今回は、物質・材料の応用、特に、ナノ、IT、環境に焦点を当て、各種先進材料の分野横断的な研究成果の発表と意見交換を行った。本国際会議の開催は、岸 輝雄理事長(NIMS)、吉村昌弘教授(東工大)、梶山千里総長(九州大学)、山本良一教授(東大)を組織委員長として、2年以上前から計画がスタートし、日本MRSの理事を中心とした組織委員会により準備が進められた。日本MRSが主催し、ナノテク支援センター、万博記念基金、NIMS、 AIST、各省庁の支援を得て開催された。国際会議全体では、口頭発表が約1,200件(内招待講演約350件)、ポスタ?発表が約800件で、合計2,000件を上回る発表があった。34ヵ国から約400名の外国人を含めて、約2,100名の参加者を得た。産独学の比率は、およそ1: 4:14と、圧倒的に大学が中心となった。しかし、深刻な不況にもかかわらず多くの企業によりサポ-トされ、共同研究を併せると、企業から全部で200件余りの発表があった。また、ハイテク化を急ぐ中国を始めとした東アジアから、材料分野で指導的な立場にある多くの研究者の参加を得た。

鏡開き (81873 bytes)
写真 Royal Wing(クルージング) 上のバンケットでICAM2003の成功を祝って 鏡開きをする、左から岸輝雄会長、Prof. Robert J. Nemanich, Prof. Robert P. H. Chang(上)    
横浜三渓園Kakushu閣で開催されたIUMRS General Assembly Meeting

(Left Picture) Kagami-Wari (opening a Sake barrel) at the conference banquet on the Royal Wing (cruising) (left to right): Prof. Teruo Kishi, Prof. Robert J. Nemanich, and Prof. Robert P. H. Chang (Right Picture) IUMRS General Assembly Meeting at Kakushu-kaku (a Japanese-style Guest House) in Sankeien Garden, Yokohama.

 オープニングプレナリーとして、ナノ、IT、環境に関する3件の基調講演があった。講演者と演題は次の通りである。国武豊喜教授:"Molecular Organizations and Ultrathin Films"、A. Paul Alivisatos教授:"Optical, Electrical, and Thermodynamic Properties of a New Class of Materials, Semiconductor Nanocrystals"、Timothy G. Gutowski教授:"Materials Development for a Sustainable Society"。引き続いて、4つのカテゴリーに分かれて39のシンポジウムが、また2つのフォーラムが、会期中にそれぞれ14日の日程で開催された。その内容は、下記のようにまとめられる。

<フォーラム>  

フォーラムF-1「材料教育と研究に関するフォーラム」は、材料科学工学における発展と教育を刺激し、魅力を高め、育成することを目的として開催された。すべてのレベルで、多くの国、地域からの材料教育、研究が報告された。過去最大、最良のフォーラムであり、将来のIUMRS会議でも引き継ぐことになった。  

フォーラムF-2「材料科学への統合アプローチ」は新しい機能を持った材料を創成するための新材料科学を目指す研究および教育を議論する目的で、21世紀COEプログラム;a United Approach to New Materials Science の財政的支援の基に開催された。これは材料科学の伝統的な分野である基礎科学と材料工学の協力の基に行われた初めてのフォーラムで、活発な議論と有益な情報交換が行われた。

<カテゴリーA> ナノテクノロジーとナノ材料プロセス技術 (ナノ)  

シンポジウムA-1 「ナノ構造の成長」では、半導体におけるナノ構造の創製技術について、量子効果による新しいデバイスを実現するためのナノ構造形成メカニズムに関する討論が行われた。III-VならびにII-VI 化合物半導体の自己組織化によるナノ構造形成、 Si-とGe-関連材料のナノ構造形成とポスターセッションに分かれて、活発な議論が行われた。  

シンポジウムA−2「ナノ構造制御高分子材料」では、「ナノ構造制御高分子の設計と合成」、「表面・界面のナノ構造制御」、「高分子ナノコンポジットと複合材料ナノ界面」、「ナノ構造制御した高分子材料の機能特性」の分野での研究発表が行われた。  

シンポジウムA-3「コンビナトリアル材料科学」では、薄膜のパラレル合成、湿式および乾式合成、ガラス形成、高速評価など、コンビナトリアル手法に関する様々な方法論について、活発に議論された。また、マテリアルインフォーマティクスに関して多数の発表があった点も特筆すべきである。  

シンポジウムA-4「表面ナノアセンブリー」では、ボトムアップとトップダウンの両方のアプローチによる、ナノメートル加工、微細構造形成とその応用に関する最新の研究成果が発表された。  

シンポジウム A-5 「ナノコーティング」は、ナノコーティングプロセス技術と理論、コンピューター技術を用いたナノコーティング構造の設計と制御技術などのトピックスに関し活発な討論が行われた。  

シンポジウム A-6 「走査プローブナノテクノロジー」では、走査プローブ顕微鏡の新技術ナノテクノロジーの応用へのアプローチ、原子・分子操作のコンセプト、分子デバイスの科学の進歩など、STMとSPMに関するナノスケールの科学技術に関するトピックスを広くカバーし、熱心な討論が行われた。  

シンポジウムA-7 「ナノコイル(第1回ナノヘリカル/らせん構造物質に関する国際会議)(第10回カーボンマイクロコイル(CMC)研究会」では、カーボンマイクロコイル・ナノコイル、ヘリカルポリアセチレン、 ヘリカルセラミック・ナノコイル、ヘリカルポリマーとその応用に関する最新の研究成果が発表された。  

シンポジウムA-8「ナノ炭素および関連構造」では、ナノ炭素の産業界においての発展と、フラーレン、ナノチューブ、ナノダイヤモンドなどの研究成果が発表され、活発な討論が行われた。  

シンポジウムA-9「イオンビームテクノロジーを用いた革新的材料に関するシンポジウム」では、イオンビームテクノロジーを駆使したナノマテリアル、ナノパーティクル、バイオマテリアルなどに関する材料研究の講演が行われた。  

シンポジウム A-10 「第2回ナノテクネットワーキングと国際協力に関するワークショップ」は、グローバルなナノテクネットワーキングの構築のために、各国からナノテクのリーダーが一同に会して、ナノテクネットワーキングの標準化、国際協力、国際連携、ナノテク戦略、ナノテク支援、研究開発動向、データベース、データマイニングなどについて横断的・学際的な検討が行われた。

<カテゴリーB> 電子材料・オプトエレクトロニクス材料とデバイス (IT)  

シンポジウムB-1「Si LSI 材料のプロセスと評価技術に関するシンポジウム」では、原子スケールで制御されたhigh-k界面、low-k新材料、単電子トランジスタ、ダブルゲートトランジスタ、そして、新SOI材料を含む新技術の重要性と実行可能性が結論的に強調された。さらに、量子化学分子動力学計算によるシミュレーション技術の有効性が、化学的機械的研磨とイオン注入に於ける原子の動的振る舞いを予測することにより示された。  

シンポジウム B-2 「柔構造有機ナノ材料とNICEからくりデバイス」では、柔構造を有する有機ナノ材料、「からくり」を評価するための技術、NICEからくりデバイスのための巧妙で知的な考えなどについて、熱心に議論された。  

シンポジウムB-3「先端液晶性材料」では、液晶、分子集合体、異方性ゲル、フォトニック液晶、キラル液晶、反強誘電性液晶、バナナ液晶、フラストレート相、電気光学、光変調、表示素子などに関する研究成果が発表された。  

シンポジウムB-4「ナノフォトニクス材料」は、最近の材料科学の境界領域を取り込みながら爆発的に発展している"Photonic Nano-materials"に関する研究を推進する新しい挑戦として開催され、さまざまな分子、高分子、ナノ材料が巧妙にかつ階層的に組織化されたナノ材料作製に関する研究成果が発表された。  

シンポジウムB-5「導電性高分子」では、電子伝導性高分子とイオン伝導性高分子の基礎および応用に関する最近の進歩について議論され、最新情報が交換された。シンポジウムは常にアットホームな雰囲気で進行し、有意義でかつ踏み込んだ多くの議論がなされた。  

シンポジウム B-6 「誘電体・強誘電体の物性と応用」では、誘電体、強誘電体、強誘電体薄膜メモリー、積層セラミックスコンデンサー、高周波応用、LTCC、焦電材料、センサー、アクチュエータ、MEMS応用などについて横断的・学際的な検討が行われた。  

シンポジウムB-7「先進的超伝導材料・プロセス」は新規超伝導体・薄膜に関する1日のB?7&8ジョイントシンポジウムを含み、4日間にわたり開催された。超伝導テープ・線材の進展、フィルター・マイクロ波応用、高性能バルクマグネット、高温超伝導物性、ジョセフソン接合の先進プロセス・特性、などのトピックスについて熱心に討議された。  

シンポジウム B-8 「酸化物薄膜の合成と複合体:超伝導体/強磁性体/強誘電体/その他」では、薄膜、結晶、バルク、セラミクスなどの酸化物合成プロセスの科学的技術的な研究成果の発表が行われた。また、積層膜や複合体などの新機能発現物質や機能調和酸化物の開発など、超伝導体、強磁性体、巨大磁気抵抗体、強誘電体、絶縁体、光学材料、電池などの広範囲の材料物性が取り上げられた。B-6, 7, 8との合同シンポジウムも一日開かれた。  

シンポジウムB-9 「先進磁性材料(先進材料に関する国際シンポジウム2003)」では、ソフトおよびハード磁性材料、超格子とナノ構造、超微粒子、薄膜、スピンエレクトロニクス、磁性半導体、TMR、GMR、GMI、磁気および磁気光学記録、磁性デバイスおよび磁気生物学的応用などのトピックスについて熱心に討議された。

<カテゴリーC> 環境調和材料と社会技術 (環境と社会)  

シンポジウムC-1「エコマテリアル」は、第6回エコマテリアル国際会議(ICEM-6th)として開催された。 第1回エコマテリアル国際会議は、10年前にICAMの1シンポジウムとして開催され、それ以来、エコマテリアルのコンセプトは広く普及し、有害物質フリー材料、高リサイクル性材料、低環境負荷材料、高資源生産性材料など、分野横断的に発展してきた。エコマテリアルの実践段階におけるさまざまな問題、注目すべき進展について多くの研究発表と招待講演により議論された。  

シンポジウム C-2 「ソフト溶液プロセス 」 は、第3回ソフト溶液プロセス国際シンポジウム(SSP-2003)として開催された。本シンポジウムは、比較的低温でセラミクスや金属材料を作成する多くの技術をカバーした。ソフト化学反応、インターカレーション、イオン交換、キレート、ゾルーゲル、水熱、電気化学析出フィルム、自己集積、テンプレート、パターンニング、環境にやさしい溶液プロセスなどのトピックスについて熱心に討議された。  

シンポジウムC-3「最新の植物系材料」では、植物系材料の特性と応用、すなわち、紙、ウッドセラミックス、複合材料、抽出、誘導体、液化、建築、保存、リサイクルおよび機能性材料等に関する発表がなされた。招待講演は、OH教授(CHONBUK国立大学、韓国)によるウッドセラミックスのオンドルヒートシステムへの応用に関して、稲盛教授(大阪薬科大学)によるヒノキチオール複合体の生化学的特性に関して、およびZHANG教授(上海交通大学、中国)による植物系材料と金属との複合体に関して行われ、注目を集めた。  

シンポジウム C-4 「暮らしを豊かにする材料-環境・医療・福祉」では、暮らしを豊かにする材料、暮らしに活かすインテリジェント材料、環境浄化材料、生体材料、生体応用、医療・福祉に関わる材料、ハイブリッド材料、自己修復材料などについて横断的・学際的な検討が行われた。  

シンポジウムC-5「光触媒」では、酸化チタン光触媒や新規光触媒材料に関して、ゾルゲル法、スパッタ法などによるプロセシング技術、機能評価、セルフクリーニング、抗菌、水処理、空気処理などへの利用技術、製品化などについて幅広く討論された。環境・エネルギーに関する問題が多くの分野で顕在化し、大きな社会問題となっている昨今、酸化チタン光触媒や新規光触媒材料に対する期待が高まっているため、多くの科学者や技術者が参加し、活発な討論が繰り広げられた。  

シンポジウム C-6 「次世代環境共生型エネルギーシステムのための先導的熱電変換材料」では、環境共生型熱電変換材料、酸化物熱電変換材料などに関する最新の研究成果が発表された。  

シンポジウム C-7 「環境半導体:その科学と未来技術」では、シリサイド半導体・環境半導体、環境適合型電子材料・電子材料資源問題・d電子相関半導体・歪格子系半導体・光半導体・赤外材料・太陽電池・熱電変換材料などのトピックスについて熱心に討議された。  

シンポジウム C-8 「ナノ医療材料 I-次世代の生医学材料と再生医療用材料-」では、生医学材料と再生医療用に関する先進材料の研究成果が報告され、バイオテクノロジーと材料科学の融合による新規のバイオマテリアルとシステムの創成について討論した。  

シンポジウムC-9「ナノ医療材料 II-バイオセラミックス-」では、最先端の研究結果の交流と研究者のネットワークを促進することを目的として、バイオセラミック、生体高分子、合成物、自己組織、自己会合、ナノ治療、ナノ診断学および医学の応用に関係するトピックをすべてをカバーした。                                                                                                                                                                                                         <カテゴリーD> 先進材料(ポリマー・バイオマテリアル・金属・セラミックス)のモデリング、作製・プロセス、新規特性  

シンポジウムD-1「スマートマテリアル/スマートストラクチャ」では、形状記憶合金、ピエゾ素子、強誘電体、磁歪材料、鉄鋼、非鉄金属、セラミックス、高分子、複合材料等スマートマテリアルなどスマートマテリアルの材料プロセス、特性評価、メカニズムを含む材料研究と、アクチュエータ、損傷検出、自己修復、ヘルスモニタリングなどの機能を持つスマートストラクチャーの機械・構造物システム研究までを含む、様々な最先端の研究成果が報告された。  

シンポジウムD-2「自己組織化材料」では、低分子、高分子、無機、複合・ハイブリッド材料の広い領域にわたる自己組織化材料が扱われた。豊田中央研究所の稲垣伸二博士から、シリカに有機成分を入れることによる結晶性のメソポーラスシリカの創成とその応用に関し、コロラド大学のDouglas Jin教授は、無機物質の替わりに液晶を形成するポリマー材料からなる新しい概念のメソポーラス材料の創成とその応用について、東京大学の藤田誠教授からはグリッドおよびカプセルを形成する自己組織化現象発現への戦略やそこから見出された新規現象に関し、3件の招待講演が行われた。口頭発表およびポスターセッションともに興味深く高いレベルの発表が続き、活発な議論がなされた。  

シンポジウム D-3 「分離膜材料」では、高分子膜、無機膜、有機-無機複合膜、膜透過のモデリング、膜構造形成のモデリングについて、熱心に討論された。  

シンポジウム D-4 「反応場制御による新しい材料プロッセッシング」では、外界からエネルギーを印加した合成プロセスとして、プラズマ反応、電気泳動法、磁場配向、マイクロ波印加、ソノケミカル反応などの反応場制御についての討論を行った。「協奏増幅」という新たな切り口から材料プロセスで起こる現象をとらえ、「反応場」を制御することで新機能・高機能材料の創製に結びついた多くの報告がなされた。  

シンポジウム D-5 「バルク金属ガラス」では、バルク金属ガラスの作成とプロセス、ガラス形成能と相変態、バルク金属ガラスをベースにしたコンポジットとナノ結晶、機械的性質、物理・化学的性質、製造技術と産業への応用を含む、バルク金属ガラスに関する幅広い問題について熱心に議論された。  

シンポジウム D-6 「高機能構造用金属材料」では、高強度材料、超微細化、疲労強度、破壊、クリープ強度、溶接性、耐食性、加工性、切削性などのトピックスについて熱心に討議された。特に、SPDによる超微細粒作成に関して熱心に議論された。  

シンポジウム D-7 「セラミックスおよびセラミック複合材料の力学物性」では、セラミック構造材料、各種のセラミック複合材料、CMC、高機能セラミック繊維、界面構造と力学物性、薄膜の力学物性、微小部材の力学物性、高温強度、、破壊靭性、非破壊検査、などのトピックスについて熱心に討議された。  

シンポジウムD-8「材料物性と機能のためのプロセッシングに関する第2回国際会議」は材料研究所(東アジア)と共催され、表面改質技術をはじめ金属、セラミックス、有機、薄膜を含む先進材料のプロセッシングに関する最新の研究結果が討論された。このシンポジウム期間中に第3回スパークプラズマ焼成に関する国際シンポジウムも開催された。キーノート講演は、M. Jeandin教授 (エコールドミン、パリ、フランス), S. Zhang教授 (ナンヤン工科大学、シンガポール), Z. A. Munir教授 (カリフォルニア大学デービス校、米国), 内藤教授 (大阪大学) and Y. B. Cheng博士 (モナッシュ大学、オーストラリア) によって行われた。  

シンポジウムD-9「ナノ材料のマルチスケールデザイン」では、理論的・計算科学的手法を用いる材料科学者・工学者が、大規模な材料シミュレーション法開発に関する最新の話題・情報を交換し、より現実的なナノ材料モデリング・設計を目指したマルチスケール計算手法開発への戦略と展望が議論された。様々な分野・年齢層の研究者の間で、i)大規模材料計算手法の発展、ii) マルチスケール・モデリングの様々な試み、iii) ハイパフォーマンス・コンピューティングやグリッド活用技術開発、および iv) ナノ構造材料・ナノデバイスにおける動的な過程・現象へのアプローチ、などについて緊密な議論が行われた。  

シンポジウムD-10「計算材料科学および計算材料設計&合成」では、種々の新しいコンピュータシミュレーション(連続体力学、分子動力学、量子力学、モンテカルロ法などによる計算)の手法とその応用が発表された。これらのシミュレーションは静的な物性ばかりでなく、ダイナミックな性質・プロセスをも対象にしているものが多かった。異なる分野間での議論が、今回のシンポジウムではうまく行われた。このシンポジウムを通して各分野のシミュレーション手法をさらに発展させる必要があり、またシミュレーション対象も広げて、高精度化と大規模化が必要であることが認識された。  

シンポジウム D-11 「コロイドとソフトマター」では、分野横断的な新しい境界領域の形成のために、コロイドとソフトマターの科学と技術について、特に合成、構造と機能に関して横断的・学際的な討論が行われた。  ポスターの多くは、口頭発表が終了した夕方から夜にかけて開 催された。サンドイッチとビールを片手に熱心な議論が行われた。 このような研究発表の他に、展示が4日間行われ、約30企業が 出店した。  また、Somiya Award の授賞式と受賞記念講演が開催された (2003年の受賞者と演題: Prof. Klaas de Groot (IsoTis NV), Prof. FuZhai Cui (Tsinghua University): "Biomimetic Calcium Phosphate Composites")。

IUMRS Somiya Award (58277 bytes)
写真 2003年 IUMRS Somiya Award はオランダ/中国の研究チームに送呈された。
Klaas de Groot of IsoTis NV博士 (左) と FuZhai Cui 清華大学教授

バンケットは、横浜港一周の夜のクルージングで、ほぼ満席の 400人が参加した。同伴者のためのエクスカーションも行われた。  6日間という長丁場で、実行委員会や現場のスタッフは大きな負担がかかったが、その甲斐あって概ね好評のうちに幕を閉じた。  これもひとえに、日本MRSの会員の皆様を始め、参加者の皆様の温かいお力添えやご支援のたまものと心から御礼申し上げます。 多くのProceedingsは査読付の論文として、日本MRSの定期ジャーナルTransactions of Materials Research Society of Japan, Vol.29 (2004) に分冊にて出版される。次回のIUMRS先進材料国際会議は、2005年7月にシンガポールにて開催が予定されている。

For further information, please contact the following addresses: General: Prof. Atsushi Suzuki and Ms. Rumino Muroi, C/o Prof. A. Susuzki's Laboratory, Yokohama National University, e-mail: icam2003@ynu.ac.jp Publication: Prof. Takaaki Tsurumi and Ms. Satomi Ii, C/o Prof. Prof. T. Tsurumi's Laboratory, Tokyo Institute of Technology, e-mail: mrsjpub@crystal.ceram.titech.ac.jp Secretariat of MRS-J: Ms. Yuko Shimizu and Ms. Shoko Tsuda, C/o The Society of Non-Traditional Technology, e-mail: m-icam@sntt.or.jp

Website: http://www.mrs-j.org/ICAM2003

ポスターセッション (181265 bytes)
写真 ポスターセッションの様子


To the Overseas Members of MRS-J

New Material Research and Nanotechnology ・・・・・・・・ p. 1
Tokio YAMABE, President, Nagasaki Institute of Applied Science, Professor Emeritus, Kyoto University

   In modern science and technology, the shape of typical materials such as silicone semiconductor has not been noticed until recently, even the size is in the order of micron or submicron. However, the latest developments of nanotechnology are disclosing the characteristic dependences of the size and the shape on various physical and chemical properties of nanosize materials;for instance, the size dependency for the disappearance of the superconducting state of nanosize superconductor, or the quite different electronic properties depending on the parallel or perpendicular to the axis of carbon nanotube. When the size of materials changes from meso to nanometer, one would encounter the unexpected discovery of the novel materials or the extraordinary properties of the materials.

Human Placenta Feeder Layers Support Undifferentiated Growth of Primate Embryonic Stem Cells ・・・・・・・・・・・・・・・ p. 2
Prof. Dr. Kanji MIYAMOTO, Department of Systems Engineering Science, Tokyo Metropolitan Institute of Technology

   Undifferentiated various embryonic stem (ES) cells can grow on mouse embryonic fibroblast (MEF) feeders. However, for clinical utilization of human ES cells, the risk of zoonosis from animal feeders to human ES cells should be excluded. Here, we have found that human placenta is a useful source of feeder cells for the undifferentiated growth of primate ES cells. As on MEF feeders, primate ES cells cultured on human amniotic epithelial (HAE) feeder cells and human chorionic plate cells (HCP) had undifferentiated growth. The cultured primate ES cells expressed Oct-4, alkaline phosphatase and SSEA-4. The primate ES cells on HAE feeder cells produced immature teratomas in vivo after injection into SCID mice. Human placenta is quite novel and important because it would provide a relatively available source of feeders for the growth of human ES cells for therapeutic purposes that are also free of ethical complications.

Report of the IUMRS 2003 ・・・・・・・・・・・・・  p. 4
Prof. Atsushi SUZUKI (Yokohama National University)

   The Materials Research Society of Japan (MRS-J) organized the 8th IUMRS-ICAM (International Conference on Advanced Materials). The conference was held at Pacifico Yokohama, Conference Center, Yokohama, October 8-13. About 2,100 scientists from 34 countries, including 400 researchers and graduate students from abroad were attended. More than 30 vendors displayed equipment and products at the accompanying exhibition. Night cruising of the conference banquet was held at the Yokohama Bay on Saturday night. The main topics of the conference were "Nanotechnology and Nanoscale Materials Processing", "Electronic and Photonic Materials and Devices", "Advanced Materials for Environment and Society" and "Fabrication and Processing of Advanced Materials with Novel Performance". The conference consisted of 2 Forums and 39 symposia on advanced materials perspectives and future research directions. The respective research highlights of the symposia and forums are presented here. The 2003 Somiya Award for International Collaboration in Materials Research was awarded to a Dutch/Chinese research team, Dr. Klaas de Groot of IsoTis NV and Professor FuZhai Cui of Tsinghua University, for their investigation of "Biomimetic Calcium Phosphate Composites".


編集後記

 
 2004年第1号の巻頭言では、「先端マテリアルリサーチとナノテクノロジー」と題して、山邊時雄先生(長崎総合科学大学学長)にご執筆いただきました。山邊先生はノーベル賞の福井謙一博士の右腕的存在の愛弟子で、専門は理論量子化学です。トピックス欄では、「ヒト胎盤細胞を用いたヒトES細胞の増殖用支持基盤材料の開発」と題して、東京都立科学技術大学大学院宮本寛治先生にご執筆いただきました。国際会議報告欄では、第8回IUMRS先進材料国際会議(IUMRS-ICAM)(2003年10月8日13日、於パシフィコ横浜)の開催報告を横浜国立大学大学院鈴木淳史先生に纏めていただきました。ご多忙のところご執筆賜りました3名の先生方に御礼申し上げます。  山邊先生と宮本先生の記述に共通することは、先端とナノの意味・意義を、電子材料から医用関連材料に至る広範囲かつ総括的視点から先端材料研究分野の重要性を明快に指摘したものであり、さらに鈴木先生には、この分野の活況ある研究状況を紹介頂きました。これらの記述は、将来、先端材料分野の研究者を目指す若き学生・大学院生に勇気と指針を与え、また現在、材料研究に従事している研究者に有意義な情報を与えるものです。科学技術立国を標榜するわが国にとって、彼らの先端材料研究推進への激励と支援が、日本MRS-Jの主要な役割であると痛感しました。(藤田安彦)